食べられる夢を見た

データ分析とデザインのあいだ

ウムヴェルトと引き出し

授業の一環で老人ホームに行ってきました。良い悪いではないですが、現場に触れることで、ありのままを体感するためのプログラムです。

 

タイミング良く行われていたレクリエーションに、主に参加させて頂きました。

最初に1ヶ月間のレクリエーション予定なんかも見せて頂いたんですが、すごいですねあれ。入居者の方が参加したいコンテンツを365日分考える。毎日違うことをやるわけではないにしても、50以上はレパートリーないとダメなんですよね。こりゃあ大変だ。

基本的にはスタッフ側が企画して参加を募るようですが、その辺りも入居者の方と共創していくと良さそうだなとか考えてました。

 

余談ですが、素人落語会みたいなものもあってとても気になりました。どんなネタやるんだろう。超偏見だけど薮入りとか子別れとかウケそう。

 

実際にレクリエーションの時間が始まると個室から(半強制的に)共用スペースに連れてこられ(半強制的に)レクリエーションに参加させられる入居者の方たち。正直その強引さに若干驚きつつも、風船を膨らまし風船バレーに。

その後も、続々と(半強制的に)集まる入居者の方たちでしたが、いざ一緒に参加して見るととても楽しそうなんですよね。私には出来ない、と最初は遠慮気味だった方もパスを上げてみると全然普通に楽しそうに打ち返してくれたり。これは、発見と共にとても嬉しい出来事でした。

 

続けておやつの時間。

僕は同じ話を繰り返すお父さんに捕まり、ぐるぐるとループする世界に浸ることになりました。

お父さんは84歳で川崎市にご実家がある。ポケットに入れていた、ネタ帳とも言える黒革の手帳からそんな情報を引き出して話してくれました。手帳を開くたび、そのページに書かれた文字列に反応し連想ゲームのように出てくるエピソード。人との会話の中で登場した単語から連想して話が拡散する僕も似たような感じだなと思うと、なんだか可笑しかったです。

 

ただ、少し物悲しさもあり。

繰り返されるエピソードを聞いていると、二人の息子さんのうち、長男の話しか出てこないことに気付きました。名前を聞いてみても、覚えていない、と。

父親と同じ道に進んだ、兄と自分。そして長男。ただ、次男は自分と違う道を選んだ。邪推ですが、そんな想いがあるのでしょうか。ひょっとすると、衝突があったのかもしれません。そう思って、あまり深く尋ねるのも野暮だと思いやめることにしました。

 

きっと、あのお父さんも、引き出しに入れる話を取捨選択したんだろうなと。最低限の自己紹介と、武勇伝と、自慢の息子。忘れてしまうことを危惧してか、手帳に大事に書き残した想い出。

 

自分も歳を重ね、引き出しの数を増やしそのキャパシティを増やすことにも限界があることを少しずつ感じてきています。何度もその取っ手を引き、中から取り出したいと思う話はどれだけ増やすことが出来るでしょうか。

 

そんなことを思った、現場での研修でした。